四国八十八ヶ所巡礼を無事に終えたら、最後に「お礼参り」を行い、巡礼の旅を締めくくるのが一般的です。お礼参りは、お遍路の道中での無事に感謝を捧げ、今後の平穏を祈る大切な儀式です。
本記事では、このお礼参りの作法や、お遍路巡礼者が訪れるべき神社・寺院について詳しくご紹介します。
四国お遍路のお礼参りとは?お礼参りの成り立ちとその重要性
四国お遍路のお礼参りの意味合いとその重要性
お礼参りは、四国八十八ヶ所巡礼を無事に終えられたことに対して感謝を捧げ、これからの日常生活に向けた祈りを込めるための重要な儀式です。「お遍路」という巡礼の旅は、巡礼者が「同行二人」として弘法大師(空海)と共に八十八の霊場を巡り、煩悩や苦しみを超越するための修行の旅です。この長い旅が終わったとき、無事に巡り切ることができた感謝の気持ちを込めて行うのが「お礼参り」です。「お礼参り」を行うことで、巡礼は心の区切りがつき、さらに強い信仰心や充実感を得られるとされています。
お礼参りには、以下のような意味合いが含まれています。
- 感謝の祈り: 無事に巡礼を完遂できたことに対する感謝を捧げる
- 祈願成就: 巡礼の旅で祈り続けた願いが叶うように祈る
- 次なる一歩への祈り: 巡礼を終えた後の人生に対する新たな気持ちでの祈り
お礼参りの成り立ちと歴史的背景
四国お遍路が始まったのは平安時代にさかのぼり、弘法大師が修行と布教のために四国を巡ったことがきっかけとされています。時代が進むにつれて、弘法大師の巡礼地を訪れることが信仰として広まり、江戸時代になると、庶民も自由に巡礼を行うようになり、四国八十八ヶ所巡りが広く知られるようになりました。そして、次第に巡礼としての形が確立されたとされています。お遍路は人々の「現世利益」や「死後の安泰」を祈る旅として根付き、巡礼の完遂後には再び第一番札所や高野山を訪れて感謝を捧げる「お礼参り」も同時に定着していったと考えられています。こうして、「お礼参り」という風習が今日に至るまで続いています。
四国お遍路のお礼参りの作法と参拝ルート
四国八十八ヶ所巡礼は、巡礼者が歩んできた道のりに感謝を込めて締めくくる「お礼参り」を行うことで、無事に旅を終えたことへの区切りとします。お礼参りにはいくつかのルートや訪れるべき場所があり、それぞれに深い意味があります。ここでは、一般的な参拝ルートをご紹介します。
念のためですが、第一番札所の霊山寺や高野山の奥ノ院へ行くお礼参りは必須ではなく、個人の自由です。
実際には、第八十八番札所の大窪寺での結願で終了するお遍路さんも多くいます。また、お参りする場合でも、すぐに訪れる必要もなく、日を改めても問題ありません。
四国お遍路の「結願所」として知られる八十八番札所の大窪寺は、巡礼の最終地点であり、ここでの参拝はお礼参りの第一歩です。「結願」とは、巡礼の完了を意味し、多くの巡礼者が最後にこの場所で手を合わせ、無事に巡礼を完遂できたことへの感謝を捧げます。境内は自然豊かで、特に秋には紅葉が美しいため、自然と一体となった静寂の中で心を落ち着けて参拝できるでしょう。
- アクセス: JR高徳線「志度駅」からバスで約70分
お遍路の起点である徳島県の霊山寺は、「発願所(ほつがんしょ)」として知られ、お礼参りで再び訪れることで、初心に立ち返る意味が込められています。多くの巡礼者は、最初にこの霊山寺を訪れて「無事に巡礼が終わりました」と報告し、再び巡礼をスタートする気持ちでお参りを行います。こうした行為が、巡礼を人生の旅に重ね合わせ、新たな一歩を踏み出す力になるとされています。
- アクセス: JR徳島線「板野駅」から徒歩約10分
高野山は、弘法大師(空海)が眠る聖地として、多くの巡礼者が最終的にお礼参りに訪れる場所です。四国八十八ヶ所巡りは「空海との同行二人(どうぎょうににん)」として、弘法大師の導きによって行われる巡礼の旅であるため、旅が無事に終わったことを報告するために、多くの人が高野山を訪れます。
高野山の奥の院は、苔むした石碑や霊廟(れいびょう)が並ぶ神秘的な参道が続き、弘法大師への感謝とともに、巡礼中の自分自身を振り返ることができる特別な場所です。
- アクセス: 南海電鉄「高野山駅」からバスで約10分
結願後の第一番札所の霊山寺への移動手段・ルート
1. 自動車で移動する場合
結願を行う八十八番札所「大窪寺」から徳島県の「霊山寺」までは車での移動が比較的便利です。大窪寺から霊山寺までは約80kmの距離で、車で約1時間半から2時間程度かかります。レンタカーを利用する場合は、周辺の主要な駅や空港で借りておくと便利です。
- 所要時間: 約1.5〜2時間
- 経路例: 大窪寺 → 国道11号線(香川県さぬき市) → 高松自動車道 → 徳島自動車道 → 霊山寺
2. 公共交通機関(電車+バス)を利用する場合
車がない場合でも、公共交通機関を利用して大窪寺から霊山寺に移動できます。ただし、大窪寺の最寄り駅である「志度駅」や「琴電琴平駅」までバスで移動し、そこから電車とバスを乗り継ぐ必要があります。少し複雑ですが、のんびりと移動したい方にはおすすめです。
主な移動ルート(公共交通機関)
- 大窪寺からJR志度駅までのバス移動(志度-造田-多和線)
大窪寺から最寄りの「志度駅」までは路線バスで移動可能です。所要時間は約70分です。 - JR志度駅から坂東駅まで移動(JR高徳線)
JR志度駅からJR高徳線を利用し、「坂東駅」まで移動します。所要時間は約1時間30分です。 - JR坂東駅から霊山寺への徒歩移動
JR坂東駅からは徒歩で霊山寺まで移動可能です。所要時間は約10分です。
- 所要時間: 約3.5〜4時間(乗り換え時間を含む)
3. タクシーの利用
大窪寺から直接タクシーで霊山寺に向かう方法もあります。公共交通機関の乗り換えが難しい場合や、荷物が多い場合には便利ですが、距離があるため運賃はやや高くなります。移動時間は約1時間半から2時間程度です。ちなみに、タクシー料金は、検索サイトで調べると、約14,000円です(深夜料金の場合は約17,000円)。
- 所要時間: 約1.5〜2時間
4. 自転車や徒歩で移動する場合
結願後に、再度第一番札所の霊山寺まで徒歩や自転車で戻る巡礼者もいます。すべての札所を巡り終えた後、初心に戻る意味を込めて再び歩くことで、達成感や感謝の気持ちをより深める方も多いです。
- 所要時間: 約1日
第88番札所の大窪寺から第1番札所の霊山寺へ徒歩などで戻る場合は、主に以下の二通りのルートがあります。
- 【ルート①】第88番大窪寺⇒第10番切幡寺⇒第1番霊山寺(大窪寺から県境に位置する長野集落から徳島県へと入り、日開谷川沿いに南下し、第10番札所の切幡寺に出るコース)
- 【ルート②】第88番大窪寺⇒大坂峠⇒第3番金泉寺⇒第1番霊山寺(大窪寺から東に進んで旧讃岐街道を通り、大坂峠を越えて徳島県に入り、第3番札所の金泉寺に出るコース)
第一番札所の霊山寺から高野山までの移動手段・ルート
霊山寺(徳島県鳴門市)から高野山(和歌山県)へは、鉄道とバスを組み合わせたルートが一般的です。高野山は山の中にあり、直通の交通手段はないため、いくつかの乗り換えが必要です。以下に、公共交通機関を利用した主要な移動ルートと手段を詳しくご紹介します。
1. 霊山寺から徳島駅までの移動
まず、霊山寺から徳島駅へ向かいます。
- 電車: JR「高徳線」を利用し、霊山寺最寄り駅のJR坂東駅から徳島駅へ。
- 所要時間: 約30分
- 運賃: 約330円
- タクシー: 荷物が多い場合や、時間を短縮したい場合に便利です。
- 所要時間: 約30分
- 運賃: 約4,000円
2. 徳島駅から高野山駅へのルート
霊山寺から高野山へは、南海フェリーと南海電鉄を組み合わせたルートが所要時間が短く、おすすめです。ただし、運航状況や天候に左右されやすいため、事前に運行情報を確認すると安心です。また、フェリーに乗ることで、移動途中に瀬戸内海の景色も楽しめるので、巡礼の締めくくりにふさわしい旅になるでしょう。
南海フェリーを利用するルート(所要時間が短めだが天候に左右されやすい)
- 徳島駅から徳島港へ
- 徳島駅から徳島港南海フェリーターミナルへ移動します。
- 所要時間: 約25分(バスの場合)、約15分(タクシーの場合)
- 運賃: 250円(バスの場合)、約1,700円(タクシーの場合)
- 南海フェリーで和歌山港へ
- 徳島港フェリーターミナルから南海フェリーに乗船し、和歌山港へ向かいます。
- 所要時間: 約2時間半
- 運賃: 大人2,500円(WEB予約割引があるため、事前予約をおすすめします)
- https://nankai-ferry.co.jp/
- 和歌山港から高野山駅へ(主に二通りのルート①②があります)
- ①和歌山港駅から南海線で和歌山市駅までは行き、和歌山市駅からJR「和歌山線」でJR和歌山駅まで、また、そこからJR橋本駅⇒極楽橋駅まで行きます。あとはケーブルカーに乗って高野山駅まで移動します。
- 所要時間: 約2時間半から3時間半
- 運賃: 約2,100円
- ②和歌山港駅から南海線で南海難波駅まで行き、そして南海難波駅から高野線で橋本駅まで行き、JRに乗換て極楽橋駅まで行きます。あとは高野山駅まではケーブルカーで移動します。
- 所要時間: 約3時間から4時間
- 運賃: 約2,000円
3. その他の交通手段
- タクシーやレンタカー: 高野山は山の中にあるため、タクシーやレンタカーでの移動も検討できます。徳島市内や和歌山港でレンタカーを借りて、最後のケーブルカーを使わずに高野山まで直接向かう方法もありますが、山道の運転が必要です。
- バスでの移動: 高野山はバスでのアクセスも可能ですが、霊山寺からの直通バスはなく、電車などと組み合わせる必要があります。