お遍路は四国八十八カ所を巡る巡礼の旅ですが、「歩きお遍路」を志す方にとって重要な課題の一つが「宿泊施設の確保」です。特に、宿泊施設が少ない地域では事前の情報収集と準備が欠かせません。ここでは、宿泊施設が不足しているエリアとその対策について詳しく解説します。
初心者必見!歩きお遍路で気をつけたい宿泊施設の不足エリアとその対策法
四国お遍路における宿泊施設数の推移動向
コロナ禍や後継者不足の影響などもあり、四国お遍路の宿泊施設数の減少が顕著になっています。
外国人歩き遍路必携とされる唯一のガイドブック「Shikoku Japan 88 Route Guide」(著・松下直行)の 2020 年版と 2023 年版を比較すると、四国遍路の宿泊施設が過去 3 年間で 70 件、全体の一割以上が減少したことが読み取られます。このことからも、これから歩きお遍路を計画している方にとって、「宿泊施設の確保」が非常に重要な課題となっていることが分かります。
県別 | 2020年版 | 2023年版 | 増減 |
---|---|---|---|
徳島県 | 137 | 125 | ▲12 |
高知県 | 243 | 212 | ▲31 |
愛媛県 | 189 | 170 | ▲19 |
香川県 | 118 | 110 | ▲8 |
合計 | 687 | 617 | ▲70 |
宿泊施設が不足しているエリア・区間
宿泊施設は一定規模の都市や有名観光地の周辺に多く立地する一方、人家の少ない山間部や太平洋沿岸では少なくなっており、空白地域も散見されます。歩きお遍路を志す方にとって、事前に知っておくべき、宿泊施設が特に不足するエリア・区間は以下の通りです。(私が実際にお遍路を歩いた経験に基づきます)
県別 | 宿泊施設が不足している主宿が不足気味の地域 | 札所間の距離 |
---|---|---|
徳島県 | 19番立江寺(小松島市)~21番太龍寺(阿南市) | 19.8km |
高知県 | 23番薬王寺(美波町)~24番最御崎寺(室戸市) | 75.4km |
27番神峯寺(安田町)周辺 | ー | |
35番清瀧寺(土佐市)~36番青龍寺(土佐市) | 13.9km | |
36番青龍寺(土佐市)~37番岩本寺(四万十町) | 58.5km | |
37番岩本寺(四万十町)~38番金剛福寺(土佐清水市) | 80.7km | |
愛媛県 | 41番龍光寺(宇和島市)・42番仏木寺(宇和島市)周辺 | ー |
43番明石寺~44番大寶寺のうち、大洲市から内子町 | 67.2km | |
53番円明寺~54番延命寺のうち、松山市北条、今治市菊間、大西 | 34.4km | |
59番国分寺~60番横峰寺のうち、横峰寺に上がる手前(西条市) | 27.0km | |
65番三角寺~66番雲辺寺のうち、雲辺寺に上がる手前(三好市) | 18.1km |
なお、歩き遍路が1日に歩く距離は、同じ場所から出発したとしても、年齢や体力、経験、その日の体調などによって、お遍路さんごとに大きく異なります(概ね 20~40km 程度)。そのため、宿が足りないと感じる地域も、歩き遍路によって個人差がありますので、念のためご注意ください。
宿泊不足エリア・区間での対策法
歩き遍路は、その日の体調や天候、遍路道の地形の厳しさなどによって毎日の歩く距離が変わるため、当日、もしくは翌日の宿しか予約せず、長距離を歩いた後に、疲れて飛び込みで宿を探すケースも少なくありません。このため、泊まりたいと思った場所で宿が確保できないと、予定以上の長距離歩行を余儀なくされたり、最悪の場合、野宿するケースも出てきます。そのような事態に陥らないための宿泊不足エリア・区間での対策法は以下の通りです。
(1)事前予約の徹底
- 宿泊不足エリアでは、事前に宿を予約することが最も効果的な対策です。1〜2週間前に連絡をして、空き状況を確認しておきましょう。また、歩くペースによって宿泊場所が変わる可能性もあるため、柔軟に対応できるよう数日先の予定も立てておくことをおすすめします。
(2)宿泊施設があるところまで交通機関を利用し移動
- 緊急避難措置として、離れた市街地にあるビジネスホテルなどに電車、バスやタクシーで行って泊まり、翌日再び前日の地点まで戻り、そこから歩き遍路を続けます。実際に私はこの方法を採用しました。交通機関を利用する場合は、終電などの時間を予め確認しておくことをおすすめします。
(3)地元の観光協会や遍路道サポートの利用
- 宿泊施設が見つからない場合、地元の観光協会やお遍路サポート団体に相談すると、地元の民宿や臨時の宿泊先を案内してもらえる場合があります。特に四国のお遍路道沿いには、お接待文化が根付いており、宿泊支援を提供するボランティア団体もあります。
(4)野宿の準備
- どうしても宿が見つからない場合、野宿の準備も考えておくと安心です。コンパクトな寝袋や、簡易的なシェルターなどを持参すれば、緊急時に対応しやすくなります。ただし、野宿は安全面や衛生面のリスクがあるため、あくまで最終手段とし、できるだけ宿泊施設の確保を優先しましょう。
(5)荷物の軽量化と移動サポートサービスの活用
- 徒歩で移動する場合、荷物を軽く保つことで、万が一宿が見つからず移動する際の負担を軽減できます。加えて、荷物の送迎サービスを利用すれば、身軽に行動でき、宿泊場所を見つけるために歩く距離が伸びても体力を温存しやすくなります。
(補足)宿泊不足エリアに備えた「持ち物リスト」
- 寝袋(軽量・コンパクトなもの)・エマージェンシーシート、ツェルト
- モバイルバッテリー(携帯電話の充電切れ対策)
- 非常食や飲料水(緊急時に備えて)
- 防水シートまたは簡易シェルター(雨天時の野宿対策)
- 現地の連絡先リスト(観光協会や遍路サポートの連絡先)